精神保健福祉士一般養成通信課程 卒業猪狩 宏美(いがり ひろみ)さん
もともと福祉のお仕事をされていたのですか?
いえ、もともとは美術の教員として学校に勤務していました。出産後も10年ほど教員を続けましたが、育児と仕事の両立が難しく退職しました。子育てに専念していた時に、たまたま友人から就労継続支援B型事業所のアート指導員の仕事を紹介され、勤務することになりました。
どうして資格を取ろうと思われたのですか?
知識のない素人が見よう見まねで援助を行うことが「失礼かもしれない」と思ったことがきっかけです。はじめはアートを通じて利用者さんの役に立てればと思っていました。しかし、次第に“専門的な知識を身につけることが、誠実な支援に繋がるのでは”と思うようになり、学べる場を探していたところ、精神保健福祉士を知りました。
家事も育児も仕事もしながら受講を決めたのはそれだけ強い思いがあったのですね。
そうですね。思い立ったらすぐに行動してしまうタイプなので、次の瞬間には資格について調べていました。また、40代という年齢で資格取得を目指すことが不安だったのですが、日福の職員さんが同年代もたくさん受講されているというお話しや、実習など素朴な疑問に優しく丁寧に答えていただけたことで最後の後押しになりました。
それはよかったです!ありがとうございます。
実際に受講し始めてどうでしたか?
育児と仕事と勉強を両立していくことは想像以上に大変でした。通信教育なので、自分のペースで勉強に取り組めることはよかったですが、とにかく隙間時間を見つけて勉強しました。
2カ月に1回のペースでレポート提出していくことは大変でしたか?
レポートについては提出がぎりぎりになってしまうことも多かったです。最初は専門的な言葉を理解しながら文章に落とし込むのに苦労しました。ただ、理解が進んでからは、どんどん楽しくなってきて、時間さえあればもっと知りたいという気持ちになっていきました。
文章をまとめるのも最初は慣れないですよね。私だったら楽しむ余裕を持てるか・・・さすが猪狩さんですね。
スクーリングや実習の日程調整などは大変だったと思いますが、いかがでしたか?
家族や職場の理解と協力があって、調整することができました。特に、実習は期間も長く、周囲に迷惑をかけることに心苦しさもありました。しかし、私の想いを尊重し、温かく送り出してくれたことには感謝しかありません。
通信教育とはいえ、実習はかなり時間を拘束されてしまうので一番難しいところですよね。
周囲のサポートがあっての上で参加できたスクーリングや実習について、特に印象に残っていることはありますか?
色々な立場や様々な考え・価値観に触れられたことがとても面白かったですね。多種多様なバックグラウンドの受講生の皆さんや様々なご経歴をお持ちの先生方もいらっしゃいました。例えば、いくつもの法人を起業し、自らの理念を形にされた施設の理事長の先生や、宅建資格を取得し、患者さんの家探しを手伝われている精神保健福祉士の先生の話は興味深かったです。他にも多様な考え方を聞け、自分の考え方を広げることができました。
そのお話しは私も驚きました。(笑)幅広い視点を学ぶことができたのですね。
ちなみに、実習はいかがでしたか?
実習は今まで経験したことがない就労移行支援施設に配属され、新鮮な体験ができました。
まずジャケット着て勤務することが久しぶりで緊張しました。
いつもと違う環境は少し緊張しますね。
そうなんです。ビジネスマナーやPCスキルを学びなおして、“いよいよ社会復帰するんだ”という独特の緊張感がある中で実習を経験することができました。
実習が終わってからも、パートで週1回勤務させていただき、利用者さんと深く関わることができたことは、さらに嬉しかったです。就労移行から就労継続までの経験ができたことで、それぞれの施設の役割や目的の理解を深めることができました。
スクーリングと実習を通じて幅広い視点と経験を身につけられたのですね。
そうですね。これは日福に通っていないとできない経験だったと思います。
国家試験の勉強も大変だったかと思いますが、どのように乗り越えたのですか?
子供が3人いるのですが、二番目の子の中学受験とちょうど私の国家試験の日が被っていました。日中は子供の送り迎えと勉強の手伝いをし、夜はカフェやファミレスで自分自身の勉強する日々を続けていました。でも、鉛筆持つことすら疲れた日は、ベッドで勉強の動画や一問一答をイヤフォンで聞き、“とにかく体で使えるところはすべて使う”という気持ちで勉強して何とか乗り越えました。
ダブル受験とはすごいタイミングでしたね。お話を聞いているだけでも大変さが伝わってきました。
無事に国家試験に合格された後に変化はありましたか?
かねてから目標にしていた相談援助業務に就くことができました。もともと働いていたB型施設の仕事を継続しつつ、同法人内グループホームで、週に数日ではありますが、相談援助業務を行っています。まだまだ経験は浅いですが、一緒にゆっくりお話しをしながら、何に困っているのか、どうしてそのように感じたのか、1回1回の面談を大事にしながら丁寧に寄り添い、社会復帰をされていく姿を見送れるよう頑張っています!
少しずつ、着実に一歩ずつ前に進んでらっしゃいますね。
これからのビジョンはありますか?
もっと知識の幅を広げていきたいと考えています。教員時代は、仕事にやりがいを感じてはいたものの、多忙な日々に流され、“先生らしくしなければならない”と力んでいた自分がいました。けれど、今の職についてから“利用者さんと一緒に歩む感覚でね”という上司のアドバイスがきっかけで、気負う心がスッと消え、自然体で仕事と向き合うことが出来るようになりました。寄り添って歩みながら、人の想いに耳を傾けていけることが、この仕事の魅力だと感じています。利用者さんの人生を大切にするソーシャルワーカーになるためにも、自己研鑽し続けたいです。仕事以外でも、年に1回程度ですが、以前勤めていた学校からお声掛けいただきアートのワークショップを行っています。有難いことに退職した年から、もう6年続いています。また、最近では、認知症の高齢者対象にボランティアでグループアートワークセラピーの提供を行うようになりました。今後も様々な人の想いを大事にする場を作っていけたらと思います。
活動の幅をどんどん広げていらっしゃるのですね。
はい。ソーシャルワーカーになるとういう夢の切符を掴み、ようやく入り口に立つことができたので、これからも出会いや学びを通じて自分の世界を広げていきたいと思っています。
猪狩さんの学び続ける姿勢は本当にすごいですね!人手不足の福祉業界において、マルチに対応できる人材はまさしくこれからの時代に求められるところですね。是非、これからもよろしくお願いいたします。
この度は貴重なお話しをありがとうございました。